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●暇旅日記9:TJさんとの別れ、そして『Keren、You saved me!』

中東旅日記
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8月4日 昼

パルミラからホムス行きのバスへ。
ホムスからTJさんはアレッポへ、私はハマへと向かう。1週間ちかく続いたTJさんとの旅も、これで終わりと思うととてもさびしい。最後の最後に、UKロックや2000年前後の日本の音楽シーンの話をひとしきりする。飽きない飽きない。。中東のど真ん中で、日本人UKロックを語りまくる(笑)。 なんてシュールな図なんだろ!



ホムス到着。カラージュ・タモドール(パルミラ駅)に着く。
事前に調べていた通り、ここから中央駅(カラージュ・ポールマン)に乗り換える必要があった。タクシーで150spで行く。セルビスもあったみたいだけど面倒だったのでタクシーで。ちなみにカタコトアラビア語で値切ったらあっさりまかる。おお、通じて感動。30分ほどで中央駅到着。ここでTJさんとお別れ。

彼は旅で出会った人とは連絡先を交換せず、いつかどこかで偶然再会できるのを楽しみにしているんだ、という。mixiやらfacebookやらで簡単にコンタクトが取れるこの御時世に、なんてロマンティックな!

『今度はイエメンか、下北沢で会いましょう!』

これが私達のかわした最後の言葉だった。

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寂しさを感じながらも次の町、ハマに向かわねばならない。
英語が全然通じない駅にて、ジモティーローカルバン(ハイエース、10人くらい乗っててギュウギュウ)になんとか乗って出発。


30分ほどでハマの町に到着。
ここの町は川とそこにかかる水車が有名で、とてものんびりできるとのこと。

でもバンを降ろされるも、地図を見てもさっぱり方向感覚がつかめない。そのうちタクシーの客引きが数人よってきた。うざいー。・・・と困っていると、近くにいた若者(♂)が救いの手を!

『ホテルの場所を教えて?・・・これならセルビスで行けるね。僕についてきて!』

シリア人には珍しく、流暢な英語を操る彼はナジーさん・IT系エンジニア。彼は私の降りる駅で一緒に降りてくれ、その上ホテルまで連れて行ってくれて、その上セルビスの料金まで払ってくれた!!!!いやいや自分で支払いますから、といっても頑として受け取ってくれなかった。日本円にして50円くらいなんだけど、この国の月収を考えたらその10倍以上にはなるはずだ。なのに・・・。

『ウェルカム・トゥ・シリア、どうぞこの国をエンジョイしてね!』

そう言って握手をして別れた。本当にシリア人には優しい人が多い。目にしみまくる。日本で困っている外国人がいたら絶対に助けよう、とこのとき心に誓いました。ナジー、シュクラン!

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ホテル『リヤドホテル』に投宿。ここは中東1快適な宿だというもっぱらのウワサ。その人気は高く、ドミトリーはもうフル。シングル900spなら空いているとのことで、ちょっと高いなーと思いつつも決める。ちょっとしたビジネスホテルみたいに居心地よし。中東にしては快適で清潔だと思う。

ここには2泊して、ハマの町歩きとこのホテルから出ているシリア近郊の遺跡ツアーに参加する予定。有名な城・クラック・デ・シュバリエには絶対はずせないし、サラディーンのファンとしてはサラディーン城も絶対行きたい!そして最終日には、ここからレバノンへ国境を抜けていかなくてはならない。

さっそくスタッフに相談すると、とっても親切にツアーの相談に乗ってくれた。本当に親身になって考えてくれた。結果、明日はアパメア・サラディーン城・デッドシティのツアーに参加する、明後日はチャータータクシーをシェアしてクラック・デ・シュバリエ城を見て、そのままレバノンとの国境へ送り届けてもらうのが一番良いことが分かった。うん、いいプラン。ありがとう。

ツアーの話をしていると、一人の白人女性が声をかけてきた。彼女も明日のツアーに参加するらしい。名前はKeren(ケレン)。話すうちに意外な事実が判明。

ケ『たった今、パルミラからここに着いたばかりなの』
ぱ『え!私もたった今パルミラからハマに着いたばかりだよ!!!』
ケ『え!どこのホテル泊まってた?』
ぱ『サンホテル。』
ケ『え!え!私もサンホテル・・・あ、あなたあの時のジャパニーズカップルじゃん!彼氏はどこ行ったの?』
ぱ『彼氏じゃないよー。旅の途中で出会って一緒に行動してただけっス。今頃はアレッポにいるかと』
ケ『Oh・・・』

そんな話をするうちにすっかり打ち解け、一緒にハマ滞在の間は行動することに。



私が知る限りのケレンのこと。
推定30代後半、アメリカ・シアトル近郊の田舎出身、考古学者で今まで50か国くらいに滞在経験有り、この前までヨルダンの砂漠で2ヶ月仕事をしていてようやく休みが取れた、ベジタリアン、大工のボーイフレンドがいるが『Sometime Boyfriend』らしい(・・・おい。)
人に気遣いができて優しくて、でも強くてタフではっきりしてて、カッコイイ自立した女性。そしてどこかさびしそうだった。

ぱ『シアトルって言えば、スタバが日本でもいっぱいあるんだよねー』
ケ『知ってるよー。私たちはスタバをあげて、あなたたちはイチローをくれた。つまり交換っこね』

・・・スタバよりイチローが欲しかったよ、とは言えなかったなあ。

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まずはハマ名物、水車を見に行く。おお、すごい迫力!そのまま川沿いに歩き、この町じゅうの水車を歩いて見に行くことに。



水車小屋の一軒で、大工仕事をしていたとっつあんが我々を招き入れてくれた。水車の動く、ギギゴオオオーとした音を遠くに聞きながら、実にのんびりとしたムードでお宅訪問。ちっさいお子が一人いて、お茶とかふるまってくれたり、水車が超迫力で楽しめるスポットを案内してくれたり。ここでもシリア人の親切さにしみじみ。


アラビア語指差し帳をもっていたので、それを使ってカタコト会話。持ってった甲斐あったー!1時間くらいお邪魔してたのかな。本当にゆったりと時がすぎる。ケレンが言った。『うん、今日は完璧な1日ね』

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しかし残念なこともあった。ここでかの有名な、初のセクハラを受けたのだ。
勿論とっつぁんからではない。近くの住人のオヤジが入ってきて、とっつあんとケレンが水車を見に行っている間にワシの腿とかさわりだしたのだ!おいおい!咄嗟のことで『マムヌーア!』(=禁止)といったのだが、ちょっとしつこかった。とっつあんとケレンが帰ってきたら手を引っ込めてたけど。
今なら『ハナ アンタ ムスリム!?』(それでもアンタ、イスラム教信者なの!?)って言ってやろうとおもってる。

セクハラは噂には聞いていたが、イスラム圏で女性一人で旅行をすることのリスクを再確認。しかしTJさんと別れた途端にこれかー。今まで護られていたんだなーとつくづく実感。イスラム世界では、カップルでない男女が一緒に行動することなどまずありえないから、私達も夫婦と思われていたんだろな。改めてTJさんの存在に感謝した。

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とっつぁんとお子に別れをつげ、川ぞいに歩いて残りの水車を見に行く。夏、しかもこの猛暑の中だったので、川や水車に地元人や子供たちが涼みにきていた。なかにはこんなツワモノも。


ガキンチョグループが水車に乗って水遊び。

ここでも悪ガキに軽い嫌がらせをされた(タッチされたりギブミーマネーと言われたりな)。でもリーダー格の子が『あいつはクルクルパーなんだ』といって止めてくれたり、ケレンが『触っちゃダメ、それがルールなの』と諌めてくれたりして、こういう場でどーにもビビッてしまうチキンな私にはとても助かった。あああ、我ながら情けない。


左がリーダー格の子。とっても強くて優しい目をしていた。

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ぐるっと町を一周し、川の一番東にあった最後の水車たもとにあったレストラン『Four Noria』で腹ごしらえ。ケレンはベジタリアンだったが、中東フードはイケルものはたくさんあるらしい。彼女オススメ料理が次々登場。見たことないがおいしそう!


ファトゥーシュ。上にチップが乗ってるサラダで美味しい。

ババガヌーシュ。ナスとホンモス(豆)のペースト。

ケベ。ヨルダン人のノスさんたち(→ここ参照)に"Must have!"と勧められた。ひき割り小麦と挽肉のメンチ。

アラブパン。食事を頼むとフリーでついてくる。かなりおいしい。


レストランから見える水車。ここでも飛びこみしてる人が・・・


メニュー。何もかもが安い。1sp=2円でした。

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宿に帰る前に、ハマ名物のハマロールをゲットすべく『アパメア』という店へ。ハマロールとは俗称で、中東のこの地域に見られる、チーズとナッツをモチモチしたクレープで巻いたお菓子。


店内でどこから来たんだ?と聞かれ、ケレンがアメリカだと答えると、『ジョージ・ブッシュ、ブーブー!!!!』とあのブーイングポーズをとって店内の従業員がいっせいに騒がしくなった。
また彼らは『オバマ、グーーーッド!!!』とも。中東ではアメリカ人は嫌われ者である。特にシリアとアメリカは仲が悪い。ケレン曰く、シリアビザをカリフォルニアで取ったら170ドルしたそうな(!!!)。政府の問題ね、とは彼女の弁。確かにアメリカのやり方には同意できない所が多々あるけれど、それをここで言われなくても・・・。ちょっとケレンに同情した。

オバマってヒーローなのね』

ケレンを元気づけるように言ったのだが、

『でもアメリカではそうじゃないのよ』

という答えが返ってきたところに、今のアメリカ社会の難しさが見て取れたのだった。


ちょっと写真がきたないなー。手作業で巻いてる。でも別にハマじゃなくても、地中海沿岸地の町なら売ってるみたい。Halawet El Jeben(ハラウェット・エル・ジベン)いいます。

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宿に戻る途中、ATMでお金を引き出そうと思って財布を開けて、大変なことに気がついた。クレジットカードが1枚、ない。しかもメインで使ってるやつ!最後に使ったのはダマスカスのATMだから、そこで取り忘れたに違いない。幸い他にカードは何枚かあるので旅に支障はないが、不正使用が気になる。シリアの人たちはそんなことしないだろう、と分かってはいるものの、やはり不安で落ち着かない。まずは早急にカード会社に電話して止めなくては。公衆電話・・・どこにあるんだろう・・・頭の中は真っ白でパニックに。
そんな様子を見てケレンがひと言。

大丈夫よ。私のPCからスカイプを使って通話すればいいわ。

それは天からの救いの声だった。本当にいいの?ありがたいけど私はアカウントを持ってないの・・・。という私をさえぎり、私のを使えばいいわ。料金も大したことないからいいのよ、気にしないで、と言ってくれた。そして文明の利器ってすごいよね、と彼女はウインクしてくれた。


さっそく宿に帰って、ケレンの部屋でスカイプを起動。使い方を教わり、カード会社にTEL・・・通じた!さすがシリア人、不正利用はされてなかったので即止めてもらう。これでほっと安心したー!

『Keren,You saved me! Thank you!』

ケレンはにっこりとこう言った。『よかったわね。』
おかげでこの晩は、何事もなくぐっすりと眠ることができたのだった。

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この日のナジーとケレンの出来事から、この先の旅で困る人が目の前に現れたら、全力で助けようと心に誓ったのだった。

★補足・旅日記と写真はこちら→
http://4travel.jp/traveler/pans/album/10503126/