追記―暗き夜にて貴方のことを

2006年4月12日
彼を忘れてゆくことが怖くなった。自分が好きだった彼の部分は、自分がそうなりたいと願う姿だから。彼以外の人を愛することにより、彼の存在が私の中から消えてゆくのが怖い。それは、新しい自分を拒否すること?
私は彼を忘れたいと願った。でもこんな形での忘却は望んでいなかった。私の、あるべき道を失いそうになってまで。自分が自分であろうとする限り、彼のことを忘れるのは不可能であると、今気付く。



4月18日
いつか貴方以外の人を愛する時がきっとくる。それでも貴方は、私の中から決して消えないのだろう。私の中で形を変えて、貴方は私の中に留まり続ける。例え私が貴方の存在を忘れてしまっても。
物質に頼ることが必ずしも良いことだとは思わない。でも貴方と繋がっている何かを所有すること、何かを想うことで、貴方を想うことが容易になる。貴方が、もしくは貴方と認識できない貴方が、くっきりと、私の中で現れる。
例えば
お互いに好きだった音楽・映画・本・喫茶店・洋服屋(とそこの服たち)・デザイン・美術館・川縁の静かな家・ボルサリーノのソフト帽・形見のバーバリーのコート・ある私鉄そしてその傍らに流れ行く川。褒めてくれたハリスツイードのジャケット、暗く静かな夜――全ては私が望んでいること。在りたいと想う姿。


もしもうっかりおかしなことに、もう一度出会うような、そんな運命があるとしたら、そのときには自分はつまるヤツでいたい。ビックリするくらいに、面白い人間になっていたい!エヘ。