静かに

あなたのことが思い出される。
理由はひとつ。それはもうすぐ夏がやってくるからだ。

夏――それはあなたにとってもわたしにとっても、特別な出来事がおこる時期だった。その多くは、春もしくはその前の秋や冬にはじまった物語が、終わりを告げることだった。

1999年、あの夏、あなたに何が起こった?わたしにとってあの夏は、あなたを思うことを禁じえた刻だった。でもあなたにとっては?只の怠惰な夏だったの?


「憶えているかい?/1999年/夏に世界が終わるなんて話/」 
 (GREAT3『ナツマチ』)


確かにもう2度と夏なんて来なくても良いと願った、1999年。生きていることも、自分の存在も、全てはあなたあっての夏だった。


私は記憶の位相で、貴方は忘却の位相。そしてまた私は撹乱の位相で、貴方は沈静の位相。相反する象形、相容れない様相。

それがあの時の私には、朧げにしか理解することが出来なかった。